ザンビアとジンバブエの国境沿いに、世界三大瀑布の1つであるヴィクトリアフォールズという滝がある。

水は100m真下へ落下し、滝幅2km弱にも及ぶ巨大な滝は、ザンビアとジンバブエの観光収入の大半をまかなう
人気観光スポットだ。

 

入場料はザンビア側が20ドル、ジンバブエ側が30ドルと、通常の私たちの旅の予算からすると
なかなか厳しい価格だが、旅中出会った多くのツアリストからかなりオススメされていたこともあり、
「ここまで来たからには見とかなきゃな。」という思いで、ザンビア側のヴィクトリアフォールズがある街、
リビングストンへと向かった。

 

ボツワナの国境からリビングストンまでの60km間は、観光客はおろか、車さえもほとんど通らないような静かな道のり。
だけどリビングストンへ足を踏み入れた途端、街は急に活気づき、外国人観光客があちこちに見えるようになった。

 

 

私たちが拠点としたバックパッカー宿の入口の外には、毎日常に数人のザンビア人が旅行者と商売をしようと
たむろしていて、宿から外にでると決まって誰かが「Hello! My friend!!!」とフレンドリーに近寄ってくる。

そして「どこ出身?」「アフリカ旅は初めて?」などと何気ない雑談を交わしたあとは決まって、
「俺アーティストなんだけど、絵を買わないか?」と唐突に切り出すのだった。

 

目的のヴィクトリアフォールズの周辺では、さらに多くの男性たちが私たちに声をかけてきた。

彼らはみんなとっても気さくなのだけれど、その笑顔の下に下心があるのは容易く感じ取れてしまう。
ニーズがあるから、お金を持った外国人旅行客を目当てにした商売をする地元の人々がいることはよく分かる。
そしてその商売が、多くの旅行者にそっけなくされる、かなりハートブレイキングな仕事であることも。

だからといって、嘘をついたり演じたりするのは、旅行者との摩擦をさらに広げるだけだと感じる。

 

私とエリオットは彼らの声かけをできるだけ軽く交わし、足早に滝のある公園内へと向かった。

こちらがヴィクトリアの滝でございます。
こちらがヴィクトリアの滝でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滝のある公園のエントランスゲートをくぐって数分ほど歩くとまもなく、今まで見たことがない規模の壮大な滝が目の前に現れた。

びしょ濡れになるほどの水しぶきと渦を巻く滝はスペクタキュラーで、自然と水のエネルギーがじんじん伝わってくる。

 

だけどそんなものすごい滝を目の前にしても、さほどテンションが上がらず、とても冷静でいる自分がいることに
気が付いた。確かにこの滝は美しく、凄まじい。だけどなぜか心を突き動かす感動はない。

 

 

エリオットも同じように感じていたようで、その理由はなんでかな?と2人で考えてみた。

例えばこれがもし、4、5日間テントを張りながら森をさまよい歩いた末に見た光景だったとしたら、
どんなにも興奮するだろう?きっとたまらなく感激するはずだ。

だけど残念ながら、旅行者目当てに商売をする人々を交わした後、入場料を支払い、人工的に整備された公園の先にある滝を、「はい、どうぞ!」と簡単に差し出されてしまうと、どうも物足りなさと期待を裏切られたような気持ちになる。

 

このぽかーんとしてしまう空虚感は、ナミビアで世界最古の峡谷フィッシュリバーキャニオンを見たときや、世界最古の砂漠ソススフレイへ行ったときも同様に感じていたものだった。

意図せず安っぽい宣伝チラシみたいになったワンショット
意図せず安っぽい宣伝チラシみたいになったワンショット in フィッシュリバー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらナミビア、世界最古の砂漠です。
こちらナミビア、世界最古の砂漠です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングストンの街から数km離れると、また草むらが延々と続くのどかな景色に戻った。

そしてさらに東へ向かうにつれ、素朴な村と人々の暮らしが垣間見える、まさに「ザ・アフリカ」な情景に心が躍った。

 

そんな中自転車を漕いでいると、「Hello! My friend!!!」と言って、満面の笑顔を浮かべる男性が私たちに近寄ってきた。

「あぁ、またここでもかぁ、、、」と少しためらいながら自転車を止めると、
「どこへ向かってるんだ?気をつけて旅しろよ!」とだけ彼は言い、握手を交わした後立ち去っていった。

あれ?想像していた反応と違う?

 

そのまた少しあと、木陰で昼食を取っていると、一台の車が私たちの前に止まった。

車から出てきた男性は手を上げて、「Hi! My friends!!!」と私たちへ向かってハイテンションで言った。
そしてまたも握手を交わし、少々立ち話をしたあと、彼は「じゃ!Safe journey!!」と言い残し、そのまま去っていった。

なんやねん!と突っ込みたくなるくらいハッピーで人のいいザンビア人
なんやねん!と突っ込みたくなるくらいハッピーで人のいいザンビア人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も何人もの人たちが私たちに明るく声をかけたが、誰一人として物を売ろうなどする素振りを見せなかった。

ただただ純粋な歓迎心から「My friend!!」と声をかけられた経験は今までになく、
その冗談かと思うほどフレンドリーで明るいザンビア人と挨拶を交わしながら自転車を漕いだ1日は、
最高にハッピーな気持ちに包まれた。

そして、初めその彼らのことを反射的に疑ってしまった自分に反省をした。

30kmの道のりをプッシュバイクする超フレンドリーおじさん。
30kmの道のりをプッシュバイクする超フレンドリーおじさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし私たちが、観光地から観光地、あるいは大きな街から大きな街へと自家用車やバスで移動していたとしたら、
ザンビア人に対していい印象を受けていなかったのかもしれない。

だけどザンビアを自転車でゆっくり横断して出会ったほとんどの人は、今まで旅をしてきた土地の中でも稀に見ない、
明るく心底あったかい人々だった。

 

 

南アフリカで出会った、世界を自転車で3年間旅している男性は、こう言っていた。
「Tourism is Lie. 」/ ツアリズムは偽物。(主に発展途上国において)

観光地は、その国が誇る自然美だったり、旅行者にとって快適なリゾートなのかもしれない。

だけどその旅行者のために作り上げられたほんの一部分を見て、その国の人柄や文化を知ることはとても難しいと思う。

一晩テントを張らせてもらったおうちの子供たち+近所の子供たち
一晩テントを張らせてもらったおうちの子供たち+近所の子供たち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界には、美しい場所が数え切れないほどある。

けどせっかく旅をするなら、そのピンポイントの限られた場所だけでなく、
そこに暮らす人と話をし、彼らの暮らしと文化のリアリティを肌で感じたい。

 

それはリゾート地を訪れるみたいに楽しく快適なことばかりではないけれど、
そうした中で心と心でちょっとでも世界と繋がることができたら、彼らの暮らしも、私たちの暮らしも、
より豊かでさらに楽しくなるんじゃないかと思う。

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