アフリカを自転車で走る

 

「今回のアフリカ旅、自転車にして本当によかったな~。」と、つくづく感じる今日この頃。もともと、自宅と駅の往復をママチャリでしか走ったことがなかった私は、この自転車旅に出る前、未知なる土地アフリカを自転車で縦断するなんてことは、体力的に相当きつくって、普段以上のありとあらゆる危険にさらされるのだろうと想像していた。

また、私たちがこの旅に出ることを決めた頃はまだ、エボラ熱の流行が沈静化しておらず、さらにISによる日本人人質事件も重なったりしたこともあり、たくさんの人に本気で心配もされた。思い返してみると、私もアフリカを訪れる前は、魅惑のアフリカに惹かれまくる反面、なぜか「アフリカ=なんか怖い、危ない」という意識を少なからず持っていた。

確かにアフリカでは、場所によってまだ内戦が続いていたり、民族間の争いやギャングによる暴力が今でも絶えない。それに加え、人口増加と気候変動に伴う食料不足や、衛生面と未教育から広がる感染病。それが、メディアから受ける「アフリカ」のざっくりとしたイメージだろう。

しかしここで、”アフリカ”と大きくひとまとめに捉えてしまってはいけないのではないかと、ふと思った。

アフリカは、アメリカとインドと中国の大陸面積をすべて足してもまだ土地が余るほどの、かなり巨大な大陸だ。そんな大きな大陸なら当然、その中には異なる文化があり、言語があり、それぞれ違った現状がある。だけどなぜだかアフリカ大陸に関しては、国や地域単位での認識ではなく、"アフリカ"全体として捉えられてしまうことが多いような気がするのは私だけだろうか?

例えばアジアの中で、日本とインドがまったく違うように、アフリカの中でも、ナミビアとリビアではまったく状況が違うのだ。この当たり前のことに私がはっきり気が付いたのは、恥ずかしながらこの旅に出てからだった。

Zanzibarの道をゆく

そんなわけで私たちは、今現在「平和」なアフリカの国々をルートに選び、旅をしている。今年4月に南アフリカを出発してから、ナミビア、ボツワナ、ザンビア、マラウィを通過し、今はタンザニアだ。自転車走行中、リアルな身の危険を感じたことは、ありがたいことに今まで一度もない。(アフリカゾウに遭遇した一件と、一人の男性が冗談で巨大マシェティを片手に私たちに突入してきた一件を除き。)

私とエリオットは自転車旅人のなかでもどちらかというとスローペースな方で、約80kmを1日の走行距離の目安にし、「この村、なんか雰囲気いいなぁ」と直感したら、たとえその日30kmしか走っていなくても、自然とその村に滞在してしまう。

バス移動だったら立ち止まることのない、小さな村。車だったら一瞬で通り過ぎてしまうであろう、うねうねの山道。そんな何てことない場所に、うっとりするような景色や人びとの生活感が溢れている気がするのだ。

私たちを追いかけてきた凛々しい少年。めちゃくちゃ足が速い

大型バスが行き来するメインの街や観光地もたまにはいいけれど、それよりその街と街の間をすかさず体感したい。そんな欲張りな私たちにとって、自転車旅はぴったりだった。あともう1つ、自転車で旅にでて良かったと強く思うことがある。それはガソリンを燃焼せずに済むことだ。むしろ、これが今回の自転車旅を決断した一番の理由といってもいいかもしれない。

本来、私とエリオットは南アフリカで中古で購入した小さな四駆車で、今回の旅をしようと思っていた。しかし、いったい何リットルのガソリンを消費することになるのだろう?と軽く計算してみると、ちょっと気の遠くなる消費量だった。自分たちの為だけの旅に、それだけのオイルを燃焼するのは、私もエリオットもどうもいい気がしなかった。

ちなみに、旅中知り合った、キャンピングカーでアフリカを南下してきたオランダ人カップルは、オランダからナミビアまでのガゾリン代が150万かかったと言っていた。ガソリン代だけで150万、、、それは私たちの1年分の旅の予算をはるかに超える金額。

そう、自転車はオイル資源を使わずに済むだけでなく、交通費も一切かからないのだ!(当たり前?笑)

うちらのエネルギー資源は食べ物!こちらワンプレート95円

自転車で旅を始めて、今月で半年。今のところの出費(ビザ代を除く)は、私とエリオットの2人で月平均約5~6万円だ。その内訳の半分ほどが、私たちのエネルギーの源である、食費に費やされている。特に節約しているわけでもないけれど、それほどの贅沢もしていない。

昼食は、通りがかりにあるローカルが集う小さな食堂や屋台で食べ、夕食は自炊する。食材は、路上と市場で何なりと揃えることができる。例えば、クリーミーなアボカドは1個10円、甘いバナナは一房30円、搾りたてのフレッシュ牛乳は1ℓ60円、蜂の足が入っちゃってるほどオーガニックな蜂蜜はボトル100円は買えてしまう。

朝昼晩、アボガドの日もあります

大きな街に行けば、ピザ屋やアジア料理レストランなどももちろんあるけれど、ローカルご飯の5倍以上の値段だ。さすがに手が出ないというか、最近はあまり欲しもしなくなってきた。

また、路上や市場で買い物をする良さは、値段の安さだけじゃない。野菜を売るおばあちゃんや、果物を売る少年、スパイスや豆を売るおねえちゃん、その1人1人と顔を合わせて、会話をしてから物を買う感覚は、スーパーマーケットで無言で買い物する感覚とは大きく違う。そしてその翌日、また同じおばあちゃんから野菜を買うと、おちゃめな笑顔でトマトを1個おまけしてくれたりするのが、めちゃくちゃうれしかったりする。

タンザニアは、そんな人との関わり合いがとってもあったかい。地元の人が訪れる場所へ行き、その土地で採れたものを食べる。それを存分に楽しむことが、アフリカ旅の節約の秘訣と言えるのかもしれない。

行きつけになったマーケット

「アフリカ (南部アフリカと東部アフリカ) を自転車で旅することはしんどくって、危ないか?」今ならこの質問に、はっきりとノーと答えることができる。

ルートは自分たちの好きに決められるので、どれだけタフな道を選ぶか、快適な道を選ぶかは、それぞれの自由だ。しかしどんな道を選んだにせよ、毎日自分たちのペースで動くことができるのが自転車旅の素晴らしいところ。

早朝発車のバスのため、夜明け前に起きずに済むし、穴ぼこの未舗装道路をあり得ないスピードで爆走する運転手に命を委ねる必要もない。(道中、何度交通事故を目にしたことか、、、)また、バスやタクシーのしつこい客引きも、自転車だと笑顔でしれっと通り過ぎられる。

この道を選ぶか選ばないかは自分次第

そして、自転車旅というとたまに、ハードコアやな!と言われたりするのだけど、実際はその真逆。自転車旅は、とても穏やかだった。これはこの旅に出るまで、予想もしていなかった。自転車からは、バスや電車で移動しては見えない風景が見える。

宙をゆっくりと徘徊する鳥たち、お茶畑の中をのんびり歩くおじいちゃん、通りすがりの母親の背中ですやすやと眠る赤ちゃん。車のエンジン音も聞こえず、砂埃も立たない静かな世界は、平和そのものだと感じる。そしてそこに、人々の優しい笑顔加われば、それ以上のものはない。

特別な「何か」じゃない、アフリカの日常。それを知るために、私たちはここまで来たんだと思う。

 

2015 / 10 / 23

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