ドタバタな幕開け – 2 island travellers

そのおかげで、出発までの２日間は荷造りと家の片付けでバタバタで、初めてトライする自転車パッキングに手こずりながらも、何とか出発当日にツーリング自転車完成した。

後ろの車輪の左右にパニアバックを２つ。その上に70Lのバックパックを１つ。そしてハンドルバックとフレームバックを１つずつ。
エリオットは前輪の左右にもパニアバックがついて、１人合計30~40kgの重量感。この重さの自転車を漕いだことは過去になく、まさにぶっつけ本番である。

荷物を積んだ自転車の扱いずらさは予想以上で、ちょっと目を離した隙にガシャン！と私の自転車が倒れ、自転車に跨がる前からハンドルバックの部品が破損してしまった。家の玄関を出て一歩のところだった。まぁ、今壊れるということは遅かれ早かれ壊れていただろうと開き直り、さくっと応急処置を施したあと、仕切り直してペダルを踏み出した！

が、慣れない自転車の重さにハンドルはぐらぐらと大きく揺れ、見送ってくれた人たちを振り返ることもできず、背後からの人々の歓声が一瞬悲鳴に変わるの聞きながら、必死の状態で、私たちの長い旅は幕を開けた。

「旅を始めてから体を慣らしていくよ」と呑気でいた私たちがその時、「これはやばい。甘くみていた。」と思ったのは言うまでもない。(しかし100mほど走るとコツをつかんで、まっすぐ走れるようになりました！めでたし。)

ケープタウンの中心部を抜け、すいすい自転車を漕ぎ出したところでようやく、「あぁ、旅が始まったんだな。この街ともお別れなんだな。」といった感情がやっと湧いてきた。ケープタウンは、私の故郷でもエリオットの故郷でもないため、いつ戻ってくるかも、もう戻ってこないかもしれない。そう思うと、なんだか周りの光景すべてが愛しく感じた。

記念すべき２日目。

今日は80km先の街に住む友達の友達の両親のお宅に泊まらせてもらえることになっていた。初日が40kmで、2時間ちょっとくらいかかったので、今日は4-5時間くらいかと予測していたが、そううまく物事は進まなかった。噂に聞いていた、サイクリストを前に立ちはだかるツワモノが、２日目にしてすでに現れた。

それは「強風」だ。

南アフリカ共和国のケープタウンは、夏を中心にとても強い風が吹く。天気は快晴でも、台風のような風が吹き荒れることがよくあり、時には車のドアを閉められないほどの風と格闘することがあった。そして、今日走った道の半分以上が、そういった横風と向かい風のオンパレードだった。

ただでさえ前に進むこともバランスを取ることも難しいのに、大きなトレーラーやダンプカーが私たちの横を通過すると、数倍の突風が私たちを襲い、勢いで車道に引き込まれそうになる。まるで小動物になったかのような気分だ。

あまり広くない道では、大きな車が通るたびに自転車をサイドに止め、ぐっと足を踏ん張って車が通過するのを待った。立ってるだけでも、足がよろめくほどの威力だった。「やった、下り坂だ！」と思っても、変わらずペダルは重く、下り坂のアドバンテージを得ることは残念ながらできなかった。

風が味方についてくれるかどうかがどれほど重要なことか。しかしこれだけは、自分たちの力で何とかできるものではないので、とにかく安全を第一に、着実にゆっくりと進んでいった。通り過ぎる車の排気ガスや突風は、サイクリストにとってありがたいものではないが、車内からグーサインをくれたり、クラクションやフラッシュでエールを送ってくれる多くの車にはとても勇気付けられる。

旅にでると、普通なら通り過ぎるだけだったであろう人々と、より身近に関わり合えるのがいいな。そんなことをぼんやり思いながら、早歩きほどのトロトロ速度で、でも止まることなく足を動かした。