出発を3日後に控えたケープタウンでの最後の週末。
私たちは、余裕ぶっこいてキャンプへ出かけてました。
これから1年のほとんどの夜を、テントで過ごすにもかかわらずです。
( ※旅にでてからは、キャンプというより「テントで暮らす」という認識の私たちです)
おかげで、出発までの2日間は荷造りと家の片付けでバタバタで、
初めてトライする自転車パッキングに手こずりながらも、何とか出発当日にツーリング自転車完成!
(ほんとにぎりぎりでした。)
後ろの車輪の左右にパニアバックを2つ。
その上に70Lのバックパックを1つ。
そしてハンドルバックとフレームバックを1つずつ。
エリオットは前輪の左右にもパニアバックがついて、1人合計30~40kgの重量感。
荷物を積んだ自転車の扱いずらさは半端なく、ちょっと目を離した隙にガシャン!と私の自転車が倒れ
(自転車スタンドは付けてません)、ペダルを漕ぎだす前からハンドルバックの部品が破損する始末。
まぁ今壊れるということは遅かれ早かれ壊れていただろうと、応急処置をさくっと施し、
いざ自転車にまたがり、ペダルを踏み出した!
が、慣れない自転車の重さにハンドルはぐらぐらと大きく揺れ、見送ってくれた人たちを振り返ることもできず、
背後からの人々の歓声が一瞬悲鳴に変わるの聞きながら、必死のぱっち状態で、私たちの旅は幕を開けました。
「旅を始めてからトレーニングするよ」と呑気でいた私たちがその時、
「これはやばい。甘くみてた。。」と思ったのは言うまでもありません。
(しかし100mほど走るとコツをつかんで、まっすぐ走れるようになりました!めでたし。)
ケープタウンの中心部を抜け、すいすい自転車を漕ぎ出したところでようやく、
「あぁ、旅が始まったんだな。この街ともお別れなんだな。」
といった感情が湧いてきた。
ケープタウンは、私の故郷でもエリオットの故郷でもないため、
いつ戻ってくるかも、もう戻ってこないかもしれない。
そう思うと、なんだか周りの光景すべてが愛しく感じた。
2日目。
今日は80km先の街に住む友達の友達の両親のお宅に泊まらせてもらえることになっていた。
初日が40kmで、2時間ちょっとくらいかかったので、今日は4-5時間くらいか。
と予測していたが、そううまく物事は進まなかった。
噂に聞いていた、サイクリストを前に立ちはだかるツワモノが、2日目にしてすでに現れた。
それは「強風」だ。
南アフリカは、夏を中心にとても強い風が吹く。
天気は晴れていても、台風のような強風がしょっちゅう吹く荒れることは、
ケープタウンに住んでから驚いたことの1つだ。
そして今日走った道の半分以上が、横風と向かい風のオンパレードだった。
ただでさえ前に進むこともバランスを取ることも難しいのに、大きなトレーラーやダンプカーが
私たちの横を通過すると、数倍の突風が私たちを襲い、勢いで車道に引き込まれそうになった。
まるで小動物になったかのような気分だ。
あまり広くない道では、大きな車が通るたびに自転車をサイドに止め、ぐっと足を踏ん張って
車が通過するのを待った。立ってるだけでも、足がよろめくほどの威力だった。
「やった、下り坂だ!」と思っても、変わらずペダルは重く、
下り坂のアドバンテージを得ることは残念ながらできなかった。
風が味方についてくれるかどうかがどれほど重要なことか。
しかしこれだけは、自分たちの力で何とかできるものではないので、
とにかく安全を第一に、着実にゆっくりと進んでいった。
通り過ぎる車の排気ガスや突風は、サイクリストにとってありがたいものではないが、
車内からグーサインをくれたり、クラクションやフラッシュでエールを送ってくれる
多くの車にはとても勇気付けられる。
旅にでると、普通なら通り過ぎるだけだったであろう人々と、より身近に関わり合えるのが
いいんだよなぁ〜。
そんなことをぼんやり思いながら、早歩きほどのトロトロ速度で、でも止まることなく足を動かした。
結局7時間半かかって、日没前に80kmを完走した。
どこの誰だか分からない私たちを、暖かく迎えてくれた友達の友達の家族は
ワインファームを経営していて、その夜はワインとステーキをご馳走してくれた。
今後楽しみなことは数え切れないほどあるけれど、
とりあえず、また明日が楽しみでしょうがない。
しあわせや感動は、日常の中にたくさん溢れている。
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