思いがけずナミビアのキャンプサイトに短期滞在してボランティアをすることになり、
自転車をほったらかしにしていたここ3週間.
試行錯誤の日々ながらも、私たちの役目はできる限り果たした!と実感したため、
仲良くなったローカルのスタッフの皆や、普段食べれないリッチな食事とお別れするときが来ました。
(ボランティアの様子は次回のブログでゆっくり書かせてもらいます!)
また地べたに座って自炊して、パッキングを繰り返す毎日が戻ってきたなぁ~と少々名残惜しく感じながらも、自転車を一度漕ぎだすと道路を疾走する心地いい感覚が戻ってきた。
新たなスタートを切った今日は、動物のいる国立公園、いわゆるサファリを自転車で通過しなければならない。
アフリカにある多くの国立公園は自転車で走ることを禁止されているけれど、このナミビア北東部にあるCaprivi National Park内に通う200kmの国道は、自転車で通過していいことになっている。
次の目的地であるザンビアへ向かうには、このCaprivi国立公園を通るか、ボツワナを通るかの二択なのだが、
どちらも野生動物が生息する地域だ。私とエリオットは、すでにそれらの地域を通過してきた自転車旅人や、
地元の人たちから情報を集めに集め、ライオンがいないとされるCapriviを通ることにした。
(その中にはライオンがいるという人もいたのだが。)
それとCaprivi内には、3つの小さな村が点在している。人が暮らしているという事実が私たちをさらに後押しし、
颯爽と国立公園へ向けて走った。
大きな動物を道中一度でも見かけたらラッキーなんだろうな~くらいに思っていたのだが、
国立公園入口のほんの少し手前で、車を路肩に止めていたおじさんが、
「丘の先にゾウがいたから気をつけるんだよ!」と私たちに向かって声をかけた。
もう早速?と、私とエリオットは半信半疑で顔を見合わせながら、そのまま国立公園のフェンスを越えた。
景色はフェンス前とまったく変わらず、延々と一直線の道が続いている。
おじさんの言った丘の先に、ゾウの姿は見当たらなかった。
もうすでに移動したんだな、とゾウを見られなかったことに少々がっかりしたが、
その日は100km先にある村で一晩明かすつもりだったので、先はまだまだ長かった。
周囲を気遣うと同時に、いいペースで自転車を漕ぐことに集中していると、
前方の草むらの中に、大きな灰色の物体がちらっと見えた。
「エレファント!!!」と気付かず前を走るエリオットに向かって叫んだときにはもう、
私たちとゾウとの距離は15mほど。
道路のすぐ脇にいたものの、草むらの色と同化していて、至近距離になるまでまったく気付けなかった。
とりあえず自転車を下りて様子を伺ったが、1頭のゾウは私たちなど気にせず、ムシャムシャと草を食べ続けている。
どうする?どうする?とエリオットと小声で緊急会議し、ゆっくりと数歩前へ前進した。
するとその途端、食事に夢中だったゾウがくるっと振り向き、こちらへ向かってくるではないか!!
ヤバい!!と私たちはすぐに動きを止めて後ずさりしたしたのだが、その時エリオットの後輪が私の前輪にひっかかり、
私はバランスを崩して自転車を倒してしまった。自転車を起こそうとするが、パニックになってうまく力が入らない。
その間に、ゾウは大きな耳をバタバタさせながら、車道に上がって距離を狭めてくる。
その距離10m以下。
”ゾウが耳をバタバタさせて向かってきたら、もうアウト。”
と、どこかの自転車旅人のブログで読んだことを思い出した。
あかん、完全にバッタバタさせてるやん、、、。
ゾウはこれまでにもサファリで何度も見ていたが、このゾウの様子は今まで見たことがないものだった。
また、動物は車には慣れているけれど、自転車の車輪の動きには慣れていないので異常に反応するとも聞いていたので、
私は自転車を起こすことをあきらめた。
エリオットも同じように思ったのか、自転車を道路脇にゆっくりと静かに倒し、私たちは「はい、お手上げ!」
と言った感じで、ゾウの前進する動きに合わせるようにゆっくりと後ずさりした。
もう全速力で逃げてしまいたい思いだったが、それをしてしまったらそれこそアウトだと予想がつく。
完全無防備で生身の私は、あまりに無力だった。
まさに一騎討ち。(正確にはでかい1 対 ちっちゃい2)
そしてゾウは私たちが敵ではないと判断したのか、少し方向転換をして数歩草むらの方向へ向かってはこちらを威嚇し、
という動きを繰り返していた。
30m、40m、、、と少しずつゾウとの距離が離れてくると、私は心臓のばくばくを落ち着かせようとした。
ゾウはもう私たちを見てはいないものの、私たちが置いていった自転車の横にぴったりと待機している。
自らの身の安全は確保できたけれど、次は相棒の自転車を救出しなければならない。
その後5分ほど道路に立ち尽くしてゾウの様子を遠くから伺っていたが、一向に去る気配はなく、
自転車の横をウロウロとしている。困った。。。だけど私たちに近づいていく選択肢はもちろんないため、
車が通りがかるのを待つしかなかった。
こういうときに限って、車はなかなか来ない。たった数分間がとても長く感じ、まだゾウとの対峙が続いていた。
そしてまもなく、前方から一台の車が走ってくるのが見えた。私たちが道路の真ん中で助けを求めると、
「道路脇にゾウ。その隣に自転車。そのかなり先に私たち。」
という様子を見て、すぐに状況を把握してくれたようだ。
すぐさま彼らは車をUターンさせて「ゾウを追い払ってみるよ!」と車内の男性は私たちに言った。
彼らは地元の人なので、ゾウの扱いには私たちよりも遥かに慣れているのだろう。
手をパンパンと叩き、音を鳴らしてゾウを追い払おうとするが、やっぱりゾウは一向に動こうとはしない。
すると二人の男性が車から下りて、ゾウの真横にある自転車を急いで起こし、
そのまま私たちの所まで自転車に乗ってきてくれた。なんと勇敢な!
私たちはぺこぺこと謝りながらお礼を言い、国立公園の入り口へと引き返した。
こんなことが起こるのはかなり珍しいとは言っても、起こってしまったら私たちの責任だ。
ちょっとした一瞬の判断ミス。警戒心の欠如。
何も起こらなくて本当によかった。
ゾウが巨大な足を上げてこっちへ前進してきたとき、その後自分がどうなるのかまったく想像がつかなかった。
その巨大な足で蹴り飛ばされるのか?長い鼻ではじかれるのか?鋭い象牙で攻撃されるのか?
そんなことを思いながら、一頭のゾウをまじまじと見つめた、緊張の一瞬だった。
もう国立公園を自転車で走るのは完全に懲りたため(走った距離はほんの数キロだっただけど)、
その日は国立公園の入り口でヒッチハイクをして戦車のような大きな軍隊車に拾ってもらい、
Caprivi国立公園を後にした。
皮肉なことに、その後の200km間、一匹も動物を見かけなかった。
やれやれ、そんなもんだよな。と思う。
野生動物はいつだって間近で見たいものだけど、ちょっとの間はいいかな。
というか、シチュエーションが大事だな。と思い改めた私とエリオットだった。
冒険はまだまだ続く。